吉良の入浜式塩田は家族経営で、通常1軒で塩田10~12a(1反~1反2畝)と塩小屋1棟を所有し、稲作・養蚕・のり養殖などと兼業で塩づくりを行っていました。
明治38年に専売制が導入された以降は、生産した塩の全量を国が決められた価格で買い取ることになったため、製塩者は安定した現金収入を得ることができました。
太平洋戦争後は全国的に塩が不足し、遠方から電車でヤミ塩を求める人々が塩田に押しかけました。塩は高値で取引され、当地の製塩業は一時的に活況を呈しました。
①砂をまく
早朝明るくなるとすぐ塩田に出て、ヒラを使って砂をくまなく広げます。潮が満ちてくると砂が海水に浸り、潮が引いて水分が乾くと塩の結晶が砂粒につきます。
②マンガを引く
午後1時30分ごろより、砂がよく乾くようにマンガを引き砂に筋をつけます。
③砂を集める
水分が蒸発して塩分の付いた砂を、オシエブリを使ってツボの近くへ帯状に集めます。
④集めた砂をツボに入れる
オシエブリで集めた砂をカキエブリで寄せて、ツボの中に入れます。
⑤かん水をとる
砂の入ったツボに海水をかけて、濃い海水(かん水)を採ります。
⑥塩を焼く
かん水を砂や骨炭でろ過した後、直径2m前後の鉄製平釜で煮詰めます。2~3時間ほどで水分が蒸発して塩ができます。
⑦カマス詰め
採れた塩は、ドサにあげ、1週間ほど放置するとにがり(苦汁)が抜けサラサラの塩になります。完成した塩は藁を編んで作った30kg入りのカマスに入れます。
⑧鑑定
専売局に出荷し検査に合格すると、専売局が買い取ります。にがりや水分が規定より多い場合などは不合格となることもありました。
※写真②⑤⑥⑦⑧は昭和11年7月撮影。
ハマトリ(入浜式塩田従事者)の技
吉良の入浜式塩田は昭和28年9月の十三号台風で壊滅的な被害を受けて廃止となり、近代的な流下式塩田に生まれ変わりました。すでに、60年以上が経過し、入浜式塩田を経験された方も少なくなりつつあります。
当時、20代でハマトリとして活躍された方が今も何人かご健在で、塩田復元や体験の指導をしていただいています。
経験者のヒラで砂を広げる様子はまさに職人わざ!!
吉良入浜式塩田保存会のメンバーにも、小学生時代に塩づくりを手伝っていた方がいます。当時は小学生になればりっぱな働き手。夏休みには毎日ハマに出て塩田の仕事を手伝っていました。運が良ければ、塩田体験会で元ハマトリの経験談を直接聞くことができます。